ウンベルト・サバ詩集より「犬」
2008年 06月 23日
『三枚の水彩画』から
会 話
「イヌは
見ればわかるが
あらゆる愛情に
はだかでいる。
ヒトよりも足りなくて、
より多くもっている、
ぼくからは、ああ、
ずいぶん遠い!
疑うということが、
まあ、ない。
ちょっと迷って、すぐ
決める。
なにをもらっても、
まちがいなく、よろこび、
ゆっくり、あるいはすぐさま、
口にくわえる。
じぶんの
知らぬものは、
すぐにさとって
しりぞける。
平和なときも、
ときには闘うときも、
あいつもヒトみたいに、
判断をあやまり、
じぶんより強い
ものに道をゆずる、
無情な運命に
たいしても。
それで損をしても、
けっして恥ずかしがらない。
そして、すぐに
もっと欲しがる。
完璧な
肢体をそなえた
カミのようだと、
おもわないか?」
ウンベルト・サバ 須賀敦子訳
1998年みずす書房